年間100人以上の転職希望者と面談してきた私が、正直に言います。
「ブラック企業の見分け方」を検索している人の中で、実際にそれを活用できる人は半分もいません。
情報はたくさんあるのに、なぜブラック企業に入ってしまう人が後を絶たないのか。
この記事では、採用担当として見てきた「ブラック企業に入ってしまう人の3つの共通点」を、具体的な事例とともに解説します。
なぜ「見分け方」を知っていても引っかかるのか
情報過多の罠
転職サイトやブログには「ブラック企業の見分け方10選」「絶対に避けるべき求人の特徴」といった記事が山ほどあります。
しかし、それを読んだ人全員が、ブラック企業を避けられているかというと、そうではありません。
採用担当として見てきた現実
私が採用担当として面談してきた人の中には、明らかに「この人、前職ブラックだな」とわかる人がいます。
そして、その人たちの多くが、また同じような企業に応募しようとしているのです。
本当の問題は「知識がない」ことではなく、「知識を使えない」ことなのです。
ブラック企業に入ってしまう人の3つの共通点
年間100人以上と面談してきた中で見えてきた、ブラック企業に引っかかる人の典型的なパターンを3つ紹介します。
【パターン1】焦りから明らかな危険信号を無視する
ケース:28歳・営業職・Mさんの場合
状況
- 前職を退職済み
- 貯金が底をつきそう
- 早く内定がほしい
応募企業の危険サイン
❌ 「やる気次第で月収80万円!」(曖昧な労働条件)
❌ 3ヶ月以上継続募集
❌ 「即日勤務可能な方歓迎」
Mさんの判断
「早く決めたいから、とりあえず応募してみます」
採用担当の本音
このパターンが最も危険です。
焦っている人は、明らかな危険信号を見ても「まあ、入ってみないとわからないし」と自分を納得させてしまいます。
焦りが生む3つの判断ミス
1. 求人票の精査を省く
- 「やる気次第で高収入」→ 基本給が異常に低い可能性
- 「若手が活躍中」→ 離職率が高く、ベテランがいない
- 「アットホームな職場」→ 具体的な福利厚生を説明できない
これらは全て「具体的な数字を出せない」企業の常套句です。
2. 面接で質問しない
本来聞くべき質問:
- 「月平均の残業時間は?」
- 「有給取得率は?」
- 「離職率は?」
焦っている人の面接:
「特に質問はありません」(早く内定がほしいから、聞かない)
3. 即日内定を「ラッキー」と思う
健全な企業の採用プロセス:
- 複数回の面接
- 適性検査
- 書類選考
ブラック企業の採用プロセス:
- 1回の面接で即日内定
- 「今日決めてくれるなら採用します」
即日内定は「誰でもいいから採用したい」というサインです。
Mさんのその後
結局、入社3ヶ月で退職。
理由:
- 基本給18万円、残りは歩合(求人票では「月収30万円〜」と記載)
- 残業月100時間超(残業代なし)
- 上司のパワハラ
【パターン2】面接で踏み込んだ質問ができない
ケース:25歳・事務職・Sさんの場合
状況
- 初めての転職
- 「質問したら失礼かな」と心配
- 内定をもらえるか不安
面接での質問時間
面接官「何か質問はありますか?」
Sさん「御社の今後のビジョンを教えてください」(当たり障りのない質問)
面接官「成長していきたいと思っています」(曖昧な回答)
Sさん「ありがとうございます。特に他にはありません」
採用担当の本音
「質問しない」は最大のリスクです。
健全な企業なら、むしろ踏み込んだ質問をする候補者を評価します。
聞くべきだった質問(Sさんの場合)
1. 残業時間について
❌ 悪い質問:「残業はありますか?」
✅ 良い質問:「月平均の残業時間を教えてください。繁忙期はどうですか?残業代は全額支給されますか?」
具体的な数字を聞くのがポイントです。
2. 有給休暇の取得率
❌ 悪い質問:「有給は取れますか?」
✅ 良い質問:「昨年度の有給取得率を教えてください。取得する際の承認プロセスは?」
「取れます」と「実際に取れている」は別です。
3. 離職率
❌ 聞かない:「失礼かな…」
✅ 聞くべき:「直近3年の離職率と、主な退職理由を教えてください」
この質問ができない人は、ブラック企業を見抜けません。
4. 前任者の退職理由
❌ 聞かない:「ネガティブな印象を与えるかな…」
✅ 聞くべき:「この募集は増員ですか?欠員補充ですか?欠員の場合、前任者の退職理由を教えてください」
5. 実際のスケジュール
❌ 悪い質問:「どんな仕事ですか?」
✅ 良い質問:「実際に働いている方の1日のスケジュールを教えてください。出社時間と退社時間の実態は?」
採用担当が教える「質問で見抜く」コツ
健全な企業の対応
- 具体的な数字で答える
- 「良い面」も「課題」も正直に話す
- 質問を嫌がらない
- むしろ「よく調べていますね」と評価する
ブラック企業の対応
- 曖昧な回答(「人によります」「やる気次第です」)
- 質問をはぐらかす
- 不快そうな表情
- 「そんなに気にしなくても」と言う
質問への対応で、企業の本質が見えます。
Sさんのその後
入社後に判明した実態:
- 求人票「残業月20時間程度」→ 実際は月80時間
- 有給が事実上取れない(「みんな取ってないから」)
- 前任者3人が1年以内に退職(面接で聞けば分かったこと)
【パターン3】情報収集を「なんとなく」で済ませる
ケース:32歳・SE・Kさんの場合
情報収集の実態
✅ 企業のホームページを見た
✅ 求人票を読んだ
❌ 口コミサイトは見ていない(「信憑性が…」)
❌ 業界の評判を調べていない
❌ 企業の業績を確認していない
Kさんの言い訳
「口コミサイトって、悪く書く人が多いから参考にならないですよね?」
採用担当の本音
口コミサイトを見ない人は、ブラック企業に入ります。
確かに、口コミには主観が入ります。
しかし、複数の口コミに共通する不満は、ほぼ事実です。
正しい情報収集の方法
1. 複数の口コミサイトをチェック
主要な口コミサイト:
- OpenWork(旧Vorkers):年収・残業時間データあり
- 転職会議:口コミ数が多い
- カイシャの評判:女性の口コミも充実
- Lighthouse:部署別の情報も
1つだけでなく、複数で確認するのがポイント。
2. 見るべきポイント
✅ 最近の口コミ(3年以内)
✅ 複数の口コミに共通する内容
✅ 具体的なエピソード(抽象的な悪口は参考にしない)
危険なサイン(複数の口コミで共通)
❌ 「残業代が出ない」
❌ 「パワハラがひどい」
❌ 「離職率が高い」
❌ 「給料が上がらない」
❌ 「有給が取れない」
これらが3つ以上の口コミで指摘されていたら、ほぼ確実です。
3. 企業情報の確認
❌ Kさんのやり方:「ホームページを見た」
✅ すべき調査:
- 会社の業績(売上推移、赤字の有無)
- 離職率(厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」)
- 労働基準監督署の指導歴(ブラック企業リスト)
- ニュース検索(「企業名 ブラック」「企業名 パワハラ」)
4. 転職エージェントの活用
転職エージェントに聞くべきこと:
- 「この企業の評判は?」
- 「過去の転職者の定着率は?」
- 「離職理由で多いものは?」
- 「求人を出す頻度は?」
エージェントは内部情報を持っています。積極的に活用しましょう。
Kさんのその後
入社後、口コミサイトの指摘がすべて的中:
- 「客先常駐で放置される」→ 事実
- 「給料が上がらない」→ 3年間昇給なし
- 「残業代が出ない」→ みなし残業45時間(超過分は未払い)
口コミサイトを30分見ていれば、避けられた失敗でした。
採用担当が教える「本当に必要な3つの対策」
私が面談した人の中で、ブラック企業を避けられている人には共通点があります。
対策1:焦らない仕組みを作る
退職前にやるべきこと
✅ 転職活動を始めてから退職する(在職中に活動)
✅ 最低3ヶ月分の生活費を確保
✅ 失業保険の手続きを理解しておく
焦りがなければ、冷静に判断できます。
在職中の転職活動が難しい場合
- 失業保険の受給期間を把握(自己都合退職:3ヶ月後から給付)
- 貯金額から「焦らず転職活動できる期間」を計算
- その期間内で決めるプランを立てる
「とにかく早く決めたい」は、ブラック企業に入る最大の原因です。
対策2:面接を「企業を見極める場」と考える
面接は「選ばれる場」ではなく「選ぶ場」でもあります。
必ず聞くべき10の質問
- 残業時間:「月平均の残業時間は?繁忙期は?残業代は全額支給?」
- 有給取得率:「昨年度の取得率は?」
- 離職率:「直近3年の離職率と平均勤続年数は?」
- 昇給・賞与:「昨年の昇給実績と賞与の実績は?」
- 1日のスケジュール:「実際の出社・退社時間は?」
- 残業代の計算:「何分単位で支給?みなし残業は?」
- 退職者の理由:「直近で退職された方の理由は?」
- 教育制度:「研修制度や教育体制は?」
- 評価制度:「評価基準と昇進の仕組みは?」
- 職場見学:「職場を見学させていただけますか?」
これらを聞いて嫌な顔をする企業は、避けるべきです。
面接官の態度で判断する
健全な企業:
✅ 質問に具体的な数字で答える
✅ 良い面も課題も正直に話す
✅ 考える時間をくれる
ブラック企業:
❌ 曖昧な回答
❌ 質問をはぐらかす
❌ 即日内定を迫る
❌ 「絶対に辞めさせない」発言
対策3:情報収集を「チェックリスト化」する
調査項目のチェックリスト
応募前に必ず確認:
- 複数の口コミサイトで評判確認(OpenWork、転職会議、Lighthouse)
- 最近の口コミ(3年以内)を10件以上読んだ
- 共通する不満がないか確認
- 会社の業績を確認(上場企業なら決算短信)
- ニュース検索(「企業名 ブラック」「企業名 パワハラ」)
- 厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」で離職率確認
- 労働基準監督署の指導歴を確認
- 転職エージェントに評判を確認
この8項目を全てチェックしてから応募すれば、ブラック企業はほぼ避けられます。
ブラック企業に入りやすい人の心理的特徴
採用担当として、もう一つ気づいたことがあります。
ブラック企業に入ってしまう人には、ある心理的な傾向があります。
特徴1:「自分は大丈夫」と思っている
「ブラック企業の見分け方」を読んでも、
「でも、この会社は違うかもしれない」
「自分なら見抜ける」
と思ってしまう。
過信が判断を狂わせます。
特徴2:「面接で質問すると失礼」と思っている
- 残業時間を聞くのは失礼? → いいえ、聞くべきです
- 離職率を聞くのは失礼? → いいえ、聞くべきです
- 前任者の退職理由を聞くのは失礼? → いいえ、聞くべきです
健全な企業は、むしろ質問する姿勢を評価します。
特徴3:「早く決めたい」という焦り
- 貯金が減っていく不安
- 周りが働いているのに自分だけ無職という焦り
- 面接に落ち続ける不安
焦りは、ブラック企業が最も狙っているターゲット層です。
まとめ:「知識」より「実行」が大事
ブラック企業に入ってしまう人の3つの共通点:
-
焦りから明らかな危険信号を無視する
- 「早く決めたい」が判断を狂わせる
- 即日内定を「ラッキー」と思ってしまう
-
面接で踏み込んだ質問ができない
- 「失礼かな」と質問を躊躇する
- 残業時間・離職率・退職理由を聞かない
-
情報収集を「なんとなく」で済ませる
- 口コミサイトを見ない
- 「信憑性が…」と言い訳する
- 企業の業績や指導歴を調べない
本当に大切なのは「実行」すること
ブラック企業の見分け方を知っていても、それを実行しなければ意味がありません。
- 焦らない仕組みを作る(在職中に活動、貯金確保)
- 面接で必ず質問する(10の質問リスト)
- 情報収集をチェックリスト化する(8項目の確認)
この3つを実行すれば、ブラック企業はほぼ避けられます。
さらに詳しく知りたい方へ
より具体的なブラック企業の見分け方については、はてなブログ「Life Career」の記事も参考にしてください:
ブラック企業の見分け方10選|求人票・面接・口コミで見抜く完全チェックリスト
こちらの記事では、チェックリスト形式で網羅的に解説しています。
Life Career Hubは、採用担当の本音として、転職で失敗しないための実践的な情報を発信しています。

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