年間100人以上の営業職候補者を面接してきた私が、正直に言います。
「営業経験があるから転職は簡単」と思っている人の7割は、失敗します。
営業職は確かに求人は多いです。でも、評価される営業と、評価されない営業の差は天と地です。
この記事では、採用担当として見てきた「営業職の転職で失敗する人の3つの共通点」を、具体的な事例とともに解説します。
なぜ「営業経験」だけでは評価されないのか
営業職の転職市場の現実
多くの営業経験者が勘違いしていること:
❌「営業経験があれば、どこでも通用する」
❌「売上を上げてきたから、評価される」
❌「コミュニケーション力があれば大丈夫」
これらは全て間違いです。
採用担当が見てきた現実
私が面接してきた営業職候補者の多くが、次のような状況に陥っています:
❌「営業経験5年」と言うが、具体的な実績を語れない
❌ 個人営業の経験だけで、法人営業に応募して落ちる
❌ 売上数字しか語れず、プロセスやスキルが不明
❌「営業だから」という理由だけで応募し、業界研究ゼロ
本当の問題は、「営業」という職種を一括りにしていることです。
営業職の転職で失敗する人の3つの共通点
年間100人以上の営業職と面談してきた中で見えてきた、失敗する人の典型的なパターンを3つ紹介します。
【共通点1】「営業経験」が全ての営業で通用すると思っている
ケース:30歳・個人営業5年・Hさんの場合
Hさんの経験
- 不動産営業5年
- 個人向けマンション販売
- 年間売上2億円達成
Hさんの認識
「営業で結果を出してきたから、SaaS営業でも活躍できるはず」
応募先
- IT企業のSaaS営業(BtoB法人営業)
- 年収アップを期待
面接での発言
面接官「SaaS営業の経験は?」
Hさん「営業経験は5年あります。お客様との信頼関係を大切にしてきました」
面接官(心の声)「それはどの営業でも同じ…質問に答えてない」
採用担当の本音
個人営業と法人営業は、全く別の職種です。
個人営業(BtoC)vs 法人営業(BtoB)の違い
個人営業(Hさんの経験):
- 意思決定者:個人
- 商談期間:即日〜1週間
- 重視されるスキル:感情に訴える、クロージング力
- 成果指標:件数、即決率
法人営業(応募先):
- 意思決定者:複数(担当者、部長、役員)
- 商談期間:3ヶ月〜1年
- 重視されるスキル:論理的提案、課題分析、ROI提示
- 成果指標:契約金額、継続率、アップセル率
Hさんの問題点:この違いを理解していない
面接での失敗
面接官「複数の意思決定者がいる場合、どう攻略しますか?」
Hさん「…お客様の声をよく聞いて、信頼関係を…」
面接官(心の声)「個人営業のやり方しか知らない…」
健全な回答例:
「まず意思決定フローを確認します。担当者、決裁者、影響者それぞれのKPIや課題を把握し、各層に合わせた提案資料を用意します。特に決裁者には、ROIと導入効果を定量的に示すことを重視します」
営業の種類による評価の違い
| 営業タイプ | 転職市場での評価 | 他の営業への転用性 |
|---|---|---|
| SaaS営業(BtoB) | 非常に高い | ◎ 他の法人営業へ転用可 |
| 法人営業(無形商材) | 高い | ○ 多くの営業へ転用可 |
| 法人営業(有形商材) | 中〜高 | ○ 同業界なら転用可 |
| 個人営業(高額商材) | 中 | △ 個人営業のみ |
| 個人営業(低額商材) | 低い | △ 他の営業への転用困難 |
| ルート営業 | 低い | △ 新規営業では評価されない |
Hさんの個人営業経験は、法人営業では評価されません。
Hさんのその後
結果:
- SaaS企業5社応募、全て書類選考で落選
- 「法人営業の経験がないため、採用は難しい」
- 結局、同じ個人営業(不動産)に転職
- 年収は変わらず、キャリアアップもできず
【共通点2】売上数字しか語れない
ケース:28歳・法人営業3年・Yさんの場合
Yさんの実績
- 人材営業3年
- 年間売上3,000万円
- ノルマ達成率120%
面接での自己PR
Yさん「前職では年間3,000万円の売上を達成しました。ノルマ達成率は120%です」
面接官「素晴らしいですね。では、どのようなプロセスで達成したのですか?」
Yさん「…とにかく数をこなしました。テレアポを1日100件、訪問を月200件…」
面接官(心の声)「数字だけで、プロセスやスキルが見えない…」
採用担当の本音
営業の「売上数字」だけでは、何も評価できません。
採用担当が本当に知りたいこと:
- プロセス:どうやって達成したか
- 再現性:他社でも同じことができるか
- スキル:何が身についているか
- 課題解決:顧客の何を解決したか
Yさんの問題点:数字の背景を語れない
面接官「テレアポ100件は素晴らしいですね。アポ率はどれくらいでしたか?」
Yさん「…正確には覚えていませんが、頑張りました」
面接官「顧客の課題をどう把握していましたか?」
Yさん「ヒアリングシートを使って…」
面接官「具体的にどんな課題が多かったですか?」
Yさん「…人手不足、とか…」
面接官(心の声)「何も分析していない…」
評価される営業の語り方
NG(Yさん):
「年間3,000万円の売上を達成しました」
OK:
「人材営業として、中小企業の採用課題を解決してきました。特に、IT人材不足に悩む企業に対し、採用要件の見直しから提案することで、平均2ヶ月で採用成功率を65%まで向上させました。この手法により、年間3,000万円の売上を達成し、顧客継続率は92%を維持しています」
違いが分かりますか?
後者は:
- 解決した課題が明確
- プロセスが分かる
- 成果指標が複数(売上、成功率、継続率)
- 再現性が見える
営業職が語るべき実績の5要素
- 課題:顧客の何を解決したか
- アプローチ:どのような方法を取ったか
- 成果(売上以外):顧客満足度、継続率、成約率など
- 売上:定量的な結果
- 再現性:そのスキルは他社でも使えるか
Yさんは、1しか語れていません。
Yさんのその後
結果:
- 「実績はあるが、スキルが不明瞭」という評価
- 希望していたSaaS企業からは不採用
- 結局、同じ人材業界の中小企業に転職
- 年収は30万円アップしたが、想定していた100万円アップは叶わず
【共通点3】業界・商材への理解が浅い
ケース:35歳・営業経験10年・Nさんの場合
Nさんの経験
- 営業経験10年(広告営業5年、保険営業5年)
- 「営業ならどこでも大丈夫」という自信
- 医療機器営業に応募
面接での質問
面接官「なぜ医療機器営業を志望されたのですか?」
Nさん「営業経験が10年あるので、どんな商材でも売れると思います」
面接官(心の声)「商材への興味がゼロ…」
面接官「医療業界や当社の製品について、どれくらいご存知ですか?」
Nさん「…これから勉強します」
面接官(心の声)「準備不足すぎる…」
採用担当の本音
「営業経験があればどこでも通用する」は、20代まで。30代以降は、業界知識が必須です。
医療機器営業の特殊性(Nさんが理解していないこと)
求められるスキル:
- 医療知識(解剖学、疾患名、治療法)
- 法規制の理解(医療機器承認、保険適用)
- 長期的な関係構築(病院との取引は5年、10年単位)
- 専門職との対話(医師、看護師、技師)
一般営業との違い:
- 商談相手が医療従事者(専門知識必須)
- 導入までの期間が長い(半年〜2年)
- 規制が厳しい(薬機法、医療法)
- 社会的責任が大きい(人命に関わる)
Nさんは、これらを全く理解していません。
業界研究をしていない証拠
面接官「当社の主力製品はご存知ですか?」
Nさん「…ホームページで拝見しました」
面接官「競合他社との違いは?」
Nさん「…すみません、詳しくは…」
面接官「医療機器営業の難しさをどう考えていますか?」
Nさん「お客様との信頼関係が大切だと…」
面接官(心の声)「どの営業でも同じ…この人は本気じゃない」
評価される業界研究
最低限必要な準備:
-
業界理解(10時間)
- 市場規模と成長性
- 主要プレイヤー
- 業界特有の課題
- 規制・法律
-
企業理解(5時間)
- 主力製品・サービス
- 競合との違い
- 企業の強み・弱み
- 財務状況(IR資料)
-
商材理解(3時間)
- 製品の特徴
- ターゲット顧客
- 価格帯
- 導入効果
Nさんは、これを1つもやっていません。
Nさんのその後
結果:
- 医療機器企業3社、全て一次面接で落選
- 「業界への本気度が感じられない」という評価
- IT業界、製造業にも応募するが、同様の理由で全て不採用
- 結局、前職と同じ保険営業に戻る
- 年収は変わらず、キャリアチェンジの機会を失う
採用担当が教える「営業職が転職で成功する3つの対策」
私が面談した人の中で、営業職から成功している人には明確な共通点があります。
対策1:営業のタイプを理解し、キャリアパスを描く
営業職のキャリアマップ
パターンA:同じタイプの営業で業界を変える
例:個人営業(不動産)→ 個人営業(保険)
- 成功率:高い
- 年収変化:±10%
- リスク:低い
例:法人営業(人材)→ 法人営業(SaaS)
- 成功率:中〜高
- 年収変化:+20〜30%
- リスク:中
パターンB:営業タイプをステップアップ
ステップアップの順序:
- 個人営業(低額商材)
- 個人営業(高額商材)
- 法人営業(有形商材)
- 法人営業(無形商材)
- SaaS営業・ソリューション営業
20代での転用性が高い理由:
- ポテンシャル採用がある
- 研修制度がある
- 失敗しても次がある
30代以降は同じタイプ内での転職が現実的
パターンC:営業からのキャリアチェンジ
営業経験を活かせる職種:
-
カスタマーサクセス(営業経験大歓迎)
- 年収:450万円〜700万円
- 活かせるスキル:顧客対応、課題解決、関係構築
- 転職難易度:低〜中
-
マーケティング(戦略思考が必要)
- 年収:500万円〜800万円
- 活かせるスキル:顧客理解、市場分析、データ活用
- 転職難易度:中
-
事業企画・開発(実績が重要)
- 年収:550万円〜900万円
- 活かせるスキル:市場理解、交渉力、プレゼン力
- 転職難易度:中〜高
重要:キャリアチェンジは20代後半〜30代前半がラストチャンス
対策2:売上以外の実績を整理する
営業職が語るべき実績の棚卸しチェックリスト
1. 課題解決の事例
- 顧客の主要課題を3つ挙げられる
- それぞれの解決方法を説明できる
- 解決後の効果を数字で示せる
例:
「採用難に悩むIT企業に対し、採用要件の見直しと候補者の母集団形成戦略を提案。結果、応募数が3倍に増え、3ヶ月で5名の採用に成功」
2. プロセスの改善
- 従来のやり方と改善後を比較できる
- 改善による効果を数字で示せる
- 他社でも応用できる内容か説明できる
例:
「従来のテレアポ中心の営業から、LinkedInを活用したソーシャルセリングに切り替え。アポ率が5%から18%に向上、商談の質も改善し成約率が12%から28%に上昇」
3. 顧客満足度・継続率
- 顧客満足度のスコアを把握している
- 継続率・リピート率を数字で示せる
- 顧客から評価されたポイントを説明できる
例:
「顧客満足度95%、契約継続率92%を3年間維持。特に、導入後のフォローアップを月1回必ず実施することで、アップセル率が35%に達しました」
4. チーム・組織への貢献
- チーム内での役割を説明できる
- 後輩育成の実績がある
- 営業プロセスの標準化・マニュアル作成に関わった
例:
「新人3名の育成を担当し、全員が半年以内に目標達成。また、自分の成功パターンをマニュアル化し、チーム全体の平均成約率が15%から22%に向上」
対策3:応募先の業界・商材を徹底的に研究する
業界研究チェックリスト(最低10時間)
業界全体:
- 市場規模と成長率を理解している
- 主要プレイヤー(トップ5社)を把握
- 業界特有の課題を3つ説明できる
- 規制や法律を理解している
応募企業:
- IR資料・決算資料を読んだ(上場企業の場合)
- 主力製品・サービスの特徴を説明できる
- 競合との違いを3つ挙げられる
- 最近のニュース・プレスリリースを5件読んだ
商材・サービス:
- 製品・サービスの詳細を理解している
- ターゲット顧客を説明できる
- 価格帯・導入コストを把握している
- 顧客が得られる価値を説明できる
面接で聞かれる質問への準備
必ず準備すべき質問:
-
「なぜこの業界を選んだのですか?」
- 業界の魅力を3つ
- 自分のスキルとの親和性
- 将来性への期待
-
「当社の製品・サービスをどう評価していますか?」
- 競合との違い
- 強み・弱み
- 改善提案(可能であれば)
-
「どのような顧客に、どう提案しますか?」
- ターゲット顧客の特定
- 課題の仮説
- 提案の方向性
これらに答えられない人は、内定が出ません。
成功した営業職の具体例
最後に、実際に成功した営業職の事例を紹介します。
成功例:31歳・法人営業・Iさん
状況
- 広告営業5年
- 年収480万円
- SaaS営業への転職を希望
Iさんがやったこと
1. 営業タイプの整理
- 自分の経験:法人向け無形商材営業
- 応募先:法人向けSaaS営業
- 共通点:法人営業、無形商材、課題解決型
- 転用可能と判断
2. 実績の言語化
売上だけでなく:
- 課題解決事例:10社の具体的な成功事例を整理
- プロセス改善:提案資料のテンプレ化で成約率1.5倍
- 顧客満足度:NPS 80点、継続率95%
- 後輩育成:3名を育成、全員が目標達成
3. 徹底的な業界研究
- SaaS業界の書籍を3冊読破
- 応募企業の競合5社を詳細に比較
- 無料トライアルで実際に製品を使用
- カスタマーレビューを50件読む
4. 面接準備
想定質問20個への回答を準備:
- 「なぜSaaS業界か?」
- 「広告営業とSaaS営業の違いをどう考えるか?」
- 「当社の製品をどう評価するか?」
- 「入社後、最初の3ヶ月で何をするか?」
結果
- SaaS企業から年収600万円でオファー(+120万円)
- インサイドセールスとフィールドセールスの両方を経験できる環境
- 入社後も期待通りの成果を出し、1年後には年収680万円に
Iさんの成功要因:
- 営業タイプの違いを理解していた
- 売上以外の実績を整理していた
- 業界・商材への本気度が伝わった
まとめ:営業職が転職で失敗しないために
営業職の転職で失敗する人の3つの共通点:
-
「営業経験」が全ての営業で通用すると思っている
- 個人営業と法人営業は全く別
- 営業タイプによる転用性を理解していない
- 30代以降は同じタイプ内での転職が現実的
-
売上数字しか語れない
- 課題解決のプロセスが説明できない
- 顧客満足度・継続率を把握していない
- 再現性が見えない
-
業界・商材への理解が浅い
- 「営業ならどこでも」という考え
- 業界研究をしていない
- 商材への興味がない
営業職が転職で成功するために必要なこと
- 営業のタイプを理解し、現実的なキャリアパスを描く
- 売上以外の実績(課題解決、プロセス改善、顧客満足度)を整理する
- 応募先の業界・商材を徹底的に研究する(最低10時間)
営業経験は、正しく活かせば強力な武器になります。
しかし、間違った使い方をすれば、むしろマイナスになります。
この記事を参考に、あなたの営業経験を正しく評価してもらえる転職を実現してください。
さらに詳しく知りたい方へ
営業職の転職成功戦略の詳細については、はてなブログ「Life Career」の記事も参考にしてください:
こちらの記事では、おすすめ業界や転職エージェントなど、成功するための具体的な戦略を網羅的に解説しています。
Life Career Hubは、採用担当の本音として、営業職の転職で失敗しないための実践的な情報を発信しています。

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